18歳の冬、絶望のどん底から救われた時に、ふつふつと心に湧きあがってきた幻、ビジョンである。孤独と不信、空しさと恐れから解放された時、それは、私の思いと願いの中にやって来て、志となった。
それまでの私のように、生きる意味と目的を見い出せず、途方に暮れてもがき苦しむ若者たちを迎え入れ、作物や動物を育てながら、生産から加工・販売まで、有機・循環型の立体農業である。自然の中で、一緒に労働に汗を流し、生活の中で希望を紡いでいく「福音牧場」の幻である。
この実現を願って18歳の時から、チャレンジをくり返し、ずうっと温め続けて来た。
農業実践大学校の畜産学部に進み、畜産関連の会社で働き、養豚牧場(3,000頭)で経験を積み、その後、アメリカ研修を経て、神学校で訓練を受け、5年間自給自足の開拓をした。
何度も挫折をくり返し、燃え尽きそうになった時、静寂な朝、「命がけで、捨て身でやりなさい」‥この語りかけに覚悟を決め、一心発起して、ポニー、羊、ヤギ、うさぎ、犬、ネコを飼いながら、まきばフリースクールを立ち上げた。今から14年前である。
その後、里親登録をして、家庭崩壊した思春期の3人の少年を18歳まで養育した。不登校、ひきこもり、非行、依存症、さまざまな心の必要を抱えた方々を、来る者拒まずで受け入れ、4人の実子と家内と一緒に、一つ屋根の下で共同生活をしてきた。
4年が過ぎた頃、家内が心労のため倒れ、その後、軌道修正をくり返し、老人介護、ファミリーホーム、復興支援、自立援助ホーム、自立準備ホーム、子どもシェルターへと働きが拡大して、現在、スタッフが35名、利用者35名、70名の大所帯となった。

自立支援は、就労訓練と繋がっている。安心出来る居場所と、信頼出来る関係性が出来たら、小さな成功体験を積み重ね、少しづつ自信を回復して、震えながらでも自分の足で立ち始める。
スペシャル・ニーズを持っている人は、特別な才能を合わせ持っている。その宝の素材を磨いて、最高の笑顔と、瞳の輝きを見い出すのが、福音牧場の使命であり、最高の喜びである。
そんな志を持ってスタートしてから無我夢中で走り続け、32年の歳月を経た。
ここに来て、不思議な導きとチャンスがめぐって来た。
東京ディズニーランド(51万㎡)の広さ2個分を上回る(110万㎡)の土地(山林、原野)を取得して、自給自足の自然村のような共同体(エコ・ビレッチ)を作りたいと願い、10年前から準備していた人が東京にいた。その人が、その土地を、そう言う目的で使う人に貸してもいいという情報を、はからずも、32年振りに会った知人から聞いたのである。先月の事である。
その所有者が準備した土地は、なんと、私が住んでいる宮城県大崎市にあるという。車で20分の仙台から30キロ圏内の所に位置していることがわかった。
このタイミングで、この時に。‥絶妙のプロデュースに、胸に込み上げるものを感じ、私の心は躍っている。
2013年、秋。この風(チャンス)つかんで、鷲(わし)のように翼をかって、高く、高く上ることが出来るだろうか?
<安心出来る心の居場所>。‥これまで、<思いと願い>が、道を拓いて来た。
福音牧場で一緒に汗を流し、喜び、楽しみ、輝いている子どもたち笑顔が、今も、<私の心の中>に映っている。


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